低周波治療器の効果とは?仕組みやほかの治療器との違いについて解説

電気治療器の中でも、低周波治療器は周波数が1,000Hz以下の低周波帯域を利用して痛みの緩和や疲労回復、血行促進、マッサージ効果などを狙う医療機器です。痛みのある部分に電気刺激を与え、肩や腰の痛みを緩和させるために利用されます。現在は自宅でも簡単に治療が行える小型の低周波治療器が実用化されており、手軽に利用できる点も魅力です。

この記事では低周波治療器の歴史や、電位治療器・高周波治療器との違い、低周波治療器が痛みを緩和する仕組みや利用時の注意点を解説します。

1. 低周波治療器とは

低周波治療器とは、皮膚に当てた2つの電極から周波数1,000Hz以下の電気を流す機械です。医療機器として認可を受けている低周波治療器は、電気刺激により疲労回復や筋肉のコリ、痛みの緩和、マヒした筋肉の萎縮予防が期待できます。家庭用の低周波治療器は、操作方法が簡単なのも魅力です。肩や腰などのコリや痛みが気になる部位に導子を貼り、スイッチを入れるだけで、多彩なパターンの刺激を筋肉に与えることができます。

1-1. 低周波治療器の歴史

低周波治療は、ヨーロッパで始まったとされています。体(筋肉)に電気を与えると筋収縮が起こったり、痛みが緩和されたりすることは約2000年前、ギリシア文明の時代より知られていました。しかし、実際に低周波を用いた治療方法が確立したのは、1965年にメルザックとウォールが発表した「ゲートコントロール理論」がきっかけと言われています。

疼痛軽減を目的とした電気刺激療法のことをTENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)と言い、TENS(テンズ)による鎮痛メカニズムにはゲートコントロール理論のほかに、内因性性オピオイドなどがあると考えられています。低周波治療器には、わずかな治療時間で痛みを抑えられ、治療後もしばらく効果が継続するメリットがあります。

現代では据え置きサイズからハンディサイズのポータブル型まで、さまざまなサイズの家庭用低周波治療器が流通しています。

1-2. 低周波治療器と電位治療器の違い

電位治療器は、電極間や電極とアース間で電界を発生させる機械です。発生した電界の中に体を置くことで治療します。低周波療法は、患部にパッドを貼る局所的な治療です。一方、電位療法は電床イスや電床マットの上に座ったり、横になりながら使用することで、全身を電位で包む治療法なのが特徴です。

電位治療器は、高圧電位と低圧電位の2種類に分けられます。接骨院・整骨院などで目にする椅子型の機械は、電圧が1,000Vを超える高圧電位タイプの電位治療器で、使用時間は1時間以下に制限されています。

一方で1,000V以下の低圧電位タイプの電位治療器は、電床マットの上に横になり使用するのが一般的です。使用時間は8時間以下を推奨されており、高圧電位タイプよりも長時間使用できます。

電界の中に体を置く電位治療器は、電流を流す低周波治療器などの電気治療器とは異なり、ピリピリした感覚が生じづらい特徴もあります。

1-3. 低周波治療器と高周波治療器の違い

電気治療器は、低周波治療器と高周波治療器に分けられます。低周波治療器は低周波帯域のため、大きく皮膚抵抗が働くことで電気特有のピリピリとした刺激が生じやすくなります。皮膚に近い部分の筋肉の痛みやコリに作用します。

一方で周波数が10,000Hz以上の高周波帯域を用いると、体のより深部にまで電気刺激を与えられます。深い部分にある痛みやコリを緩和できるのが特徴です。

低周波治療器と高周波治療器は、症状や痛みの種類によって使い分けるのがおすすめです。

2. 低周波治療器の疼痛緩和効果と仕組み

低周波治療器には、筋肉痛や疲労感の緩和だけでなく、急性痛や慢性痛へアプローチする治療もあります。さらに低周波治療器にはマッサージ効果もあり、リフレッシュできるのも魅力です。

低周波治療器による痛みの緩和には、理論的な裏付けがあります。ここでは、低周波治療器が普及するきっかけとも言われているゲートコントロール理論など、低周波治療器によって痛みが和らぐ仕組みの一部を紹介します。

2-1. 痛みを和らげる仕組み1:「ゲートコントロール理論」

ゲートコントロール理論とは、刺激によって痛みを緩和できる仕組みを説明した理論です。1965年にロナルド・メルザック(Ronalnd Melzack)とパトリック・ウォール(Patric D.Wall)が発表しました。

ゲートコントロール理論のゲートとは、脊髄後角にある痛覚のきっかけを作るT細胞を指します。T細胞に伝わる刺激をコントロールすることにより、痛覚を抑えられると提唱したものです。

皮膚で受けた刺激は、太い神経線維と細い神経線維から脊髄後角を通り、脊髄に入ります。太い神経線維は触覚刺激を伝え、細い神経は痛みを伝える役割があるとしているのが、ゲートコントロール理論の考え方です。触覚刺激の伝達速度は痛覚刺激よりも速く、同時に2つの神経線維が刺激されると、太い神経線維を通る触覚刺激の信号がいち早く脳に到達します。

触覚刺激が脳に到達すると、信号は脊髄後角のT細胞へ下降し、細い神経線維が伝える痛覚刺激のゲートを閉じます。結果的に伝達速度の遅い痛覚が脊髄に入りづらくなります。

低周波治療器はゲートコントロール理論の仕組みを応用し、電気刺激による皮膚刺激によって痛みを軽減させます。さらに近年では、電気刺激によって、脊髄液内にさまざまな鎮痛物質が誘発されることも発見されました。したがって電気刺激療法は、急性および慢性の痛み緩和に適した特性を持つと言えます。

2-2. 痛みを和らげる仕組み2:「血行促進」

痛みを和らげるには、痛みを感じる部位の血流を促進することも重要です。血行不良によって筋肉が酸欠状態になると、筋肉で発痛物質が発生したり、疲労物質が停滞したりして、炎症を引き起こします。結果的に筋肉の緊張状態が続き、痛みの原因になります。したがって、痛みの改善には血行不良へのアプローチも重要です。

電気の力で筋肉の収縮と弛緩を繰り返せる低周波治療器には、血行促進の効果も期待できます。低周波治療器から電気が流れると、筋肉は一時的に収縮し、通電が止まると筋肉は弛緩します。筋肉が血液を送る筋ポンプ作用を活発にし、血流を促進するのが低周波治療器です。血行促進によって疲労物質が押し流されるのも、痛みの改善につながります。

3. 低周波治療器の注意点

低周波治療器を使用する上での主な注意点は、以下の通りです。

刺激が強いほど効果が出るわけではない

刺激が強いほど、効果が高まったり持続したりするわけではありません。筋疲労につながるため、心地よく感じる程度の刺激レベルやモードに設定してください。

心臓の近くや頭、粘膜には装着しない

心臓に負担をかける恐れがあることから、心臓の近くにつけてはなりません。また、脳に悪影響を及ぼす可能性もあるため、頭部への使用も避けるほか、口内や陰部などのデリケートな粘膜にも使用を控えてください。

ペースメーカーを装着している場合は使用しない

誤作動を起こす可能性があるペースメーカーなどの埋め込み型の電気機器を使用している方は、使用を控えてください。人工心肺や心電計のような医用機器を使用している場合も同様です。

また、使用前には各機器の説明書に書かれた使用方法や禁忌事項などを必ず確認してください。

まとめ

低周波治療器は痛みの緩和や疲労回復、血行促進、マッサージ効果を得る目的で用いられ、電極から1,000Hz以下の低周波帯域で治療を行います。伊藤超短波では、「低周波治療」と温熱効果のある「超短波治療」が一台に搭載されている家庭用治療器もあります。目的に合わせて使用してみましょう。

監修者プロフィール

福井 直樹 先生

理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員

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