Column 13

睡眠の質を上げる生活習慣とは?睡眠の質の重要性についても解説
- 健康のお悩み
自律神経とは、人間の意志とは無関係に働き、呼吸や消化、排泄、分泌などの生きるために必要な機能を維持・調整する重要な神経です。しかし、ストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化などにより、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと、さまざまな不調を感じる場合もあります。
当記事では、自律神経のバランスが崩れる原因とその影響、そしてバランスを整えるための具体的な方法について詳しく解説します。倦怠感やめまいなど、体調不良を感じている方は、一度生活習慣を見直すことが大切です。
自律神経とは人間の意思と無関係に働き、呼吸・消化・排泄・分泌といった生きるために必要な機能を維持・調整している神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれ異なる役割を担当しています。
交感神経は体内の「アクセル」として働き、興奮の刺激をさまざまな臓器や器官に伝達する神経です。
副交感神経は体内の「ブレーキ」として働き、臓器や器官の機能を調整したりリラックスを促したりする神経です。
たとえば、ホラー映画を見て心拍数が早くなったり汗をかいたりする反応は、交感神経の働きによるものです。視聴を終了してひと息つく際には副交感神経の働きで汗が引き、心拍数も正常に戻ります。
(出典:東京都生涯学習情報「028 自律神経とはどんな働きをするのですか?心や体にどんな関係があるのですか?」)
自律神経のバランスとは、交感神経と副交感神経が適時適切に切り替わり、身体を理想的な状態に維持できているかどうかを示します。交感神経と副交感神経がスムーズに切り替わらず、自律神経のバランスが崩れてしまうと、以下のような症状が生じます。
自律神経のバランスが崩れた場合には、さまざまな場所に不調を来たすリスクがあります。自律神経の乱れを放置すると血圧が上がり、重大な病気につながるリスクもあるため、意識的な対策を取ることが重要です。
自律神経のバランスが崩れる原因は主に、ホルモンバランスの変化・ストレス・生活習慣の乱れです。
女性ホルモンの分泌を担当している「視床下部」は、交感神経や副交感神経の切り替えにも関係する器官です。ホルモンバランスが変化すると視床下部が混乱して正常に機能しにくくなり、自律神経のバランスに影響するリスクがあります。
過剰なストレスを感じた際には交感神経が優位になり、身体を活動モードへ切り替えます。頻繁にストレスを感じると活動モードから休息モードへ切り替わらず、自律神経のバランスに影響します。
昼夜逆転生活や不規則な食事によって体内時計が狂った場合、活動モード・休息モードの切り替えタイミングを身体が判断しにくくなります。自律神経のバランスは、偏った食生活や睡眠不足で崩れてしまうケースもあるため、生活習慣全般を整えるよう心がける必要があります。
自律神経のバランスは上記のほか、悪天候や暑さ・寒さといった不可避な事象の影響も受けます。また、昇進や結婚といった嬉しいライフイベントがストレスとなり、自律神経のバランスを崩すこともあるため、注意が必要です。
自律神経のバランスが崩れたときはまず、生活習慣を見直すことで改善を図るのがおすすめです。具体的には以下の対策に取り組むと、自律神経のバランスを自分自身で整えられる可能性があります。
人間の体内時計は25時間程度のリズムを刻んでいるため、1日単位で意識的にリセットしないと、徐々に狂ってしまいます。自律神経のバランスを整えるには起床後すぐにカーテンを開けて日光を浴び、体内時計をリセットします。
体内時計の狂いを防止するためには、以下の対策を取ることもおすすめです。
「寝不足を解消したい」などの理由で、休日の睡眠時間を意図的に長くする場合は、普段の睡眠時間と比較して2時間以内の差に留めることをおすすめします。また、20〜30分程度の昼寝を行い、睡眠不足を解消する方法もあります。
(出典:東京都羽村市健康課「よい睡眠をとるために」)
自律神経へのアプローチ方法として、日常的にストレッチを行い体の血行促進を図ることも効果的です。ここでは、仕事の合間に実践しやすいストレッチの具体例を紹介します。
片方の腕を伸ばして逆側の腕で肘を押さえ、胸方向へと引き寄せます。一旦元の状態に戻った後、反対側も同様に行ってください。
椅子に座った状態で両手を組み、背伸びします。片方の手で逆側の手を引っ張るようにイメージしつつ、身体を横に倒してください。
いずれのストレッチも無理をせず、痛みを感じない程度の負荷で行うことがポイントです。ストレッチの最中は伸ばしている筋肉に意識を向け、集中して取り組んでください。
毎日の入浴は心身の緊張を和らげ、副交感神経への切り替えを促すための重要な習慣です。就寝時間の1〜2時間程度前に37〜40度程度のお湯を溜めて、ゆっくりお風呂に浸かります。
過度のストレスを感じている時にはアロマオイルやハーブ液をお湯に入れ、香りによって癒される方法もおすすめです。良い香りを楽しみつつゆっくり身体を温めることで交感神経の働きを抑制すると、副交感神経への切り替えを促せます。
就寝直前までスマホを使用していると目周辺の筋肉が緊張し、自律神経のバランスに影響するリスクがあります。就寝前のスマホは交感神経を働かせ、安眠を妨げる原因にもあたるため、控えるのがおすすめです。
就寝前のスマホの使用を止められない人は、寝室への持ち込み自体を控え、スマホの代わりに読書や音楽鑑賞を行えば、目に優しい方法で就寝前の時間を楽しめます。
自律神経のバランスを整えるためには、栄養バランスの整った食事を決まった時間に取ることが大切です。基本を守った上で以下のポイントを意識し、自律神経のバランスに配慮した食生活を送るよう心がけましょう。
満腹になるまで食べると胃腸に過剰な負担をかけ、自律神経のバランスを崩すリスクがあることから、食べる量は腹八分目に留めます。消化吸収しにくい食事の内容は、体質によって異なります。胃腸の負担を軽減するためには胃もたれしやすい食材やメニューを理解しておき、食事内容を調節すると安心です。
パントテン酸・ビタミンC・カルシウムなどはストレス耐性を高め、自律神経のバランスを整えたい時におすすめの栄養素にあたります。イライラしている感情を落ち着かせるためには、セロトニンの原料になる「トリプトファン」を意識的に取るのもおすすめです。
(出典:鳥取県智頭町「~自律神経と食事の関係~」)
(出典:三重県伊勢市「ストレスを感じたときに必要な食事」)
日々蓄積していくストレスを解消するためには、自宅のリビングに好きな香りのアロマを焚く・ヒーリングミュージックを流すなどの方法で意識的にリラックスしましょう。1日の終わりに日記を書き、気持ちの整理を行うのもよい方法です。
ストレスを感じた時、意識的にリラックスしたい場合には、深呼吸がおすすめです。深呼吸を行うと自然と呼吸が深くなり、心身の緊張が和らぎます。
自律神経のバランスが崩れると、体調不良や精神的な不安定さを引き起こします。しかし、生活習慣の見直しや適切な対策を取ることで、自律神経のバランスを整えられます。体内時計のリセット、ストレッチやお風呂、スマホの使用を控えるなど、日常生活に取り入れやすい方法から始めましょう。
ただし、生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は、一度病院などの医療機関で診察してもらうことをおすすめします。
監修者プロフィール
福井 直樹 先生
理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員