Column 08

自分で簡単にできる足底筋膜炎の治し方とは?予防方法も解説
- スポーツ
運動を始めたばかりのときや、ジャンプやランニングの着地など、すね周囲の筋肉に負荷のかかる運動を続けているとき、すねの内側に痛みを感じるケースがあります。足のつま先を上げるときに使う筋肉を使いすぎるとシンスプリントを発症し、放置すると日常生活でも痛みを感じてしまうケースもあるので注意が必要です。
当記事では、シンスプリントの症状や原因、予防法を詳しく解説します。運動を定期的に行っている方は、シンスプリントのリスクを覚えておき、違和感があるときに適切に対処できるようにしておくことが大切です。
シンスプリントとは、下腿(膝下から足首までの部位)にある脛骨の骨膜が炎症を起こし、すねに疼痛が生じる状態のことです。「過労性脛骨骨膜炎」や「過労性脛部痛」、 「Medial Tibial Stress Syndrome(MTSS)」とも呼ばれます。
シンスプリントはスポーツ障害の一種です。ダッシュ・ジャンプの頻度が多い競技のスポーツ選手や、ランニングをよくする人などは、シンスプリントを発症する可能性があります。
シンスプリントを発症すると、すねに痛みなどの症状が発生します。
症状を起こす部位は炎症した骨膜の位置によって異なり、下腿内側の場合は「運動時痛」 「圧痛」といった痛みや、患部が腫れ上がる「腫脹」が主症状です。
シンスプリントの痛みの症状は、下記の4ステージに分けられます。
ステージ1 | 運動後にのみ痛みがある |
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ステージ2 | 運動前後に痛みはあるが、軽い運動で痛みは消失する。 パフォーマンスに影響はない。 |
ステージ3 | 運動中は常に痛みがあり、パフォーマンスが低下する。 |
ステージ4 | 安静時にも慢性的に痛みがあり、日常生活においても支障が生じる。 |
早期であるうちは、運動を継続していると痛みを感じにくくなる点がシンスプリントの特徴です。
しかし、適切な治療をせずにそのまま運動を続けた場合は運動中にも痛みを感じるようになり、ステージが進行すると日常生活でも痛みを感じるようになります。
シンスプリントと同じようにすねの痛みがあるスポーツ障害に「疲労骨折」があります。
疲労骨折とは、同じ部位に繰り返し小さな力が加わることで発生する骨折です。疲労骨折によってすねの痛みがある場合は脛骨にひびが入っていて、完全な骨折に至るケースもあります。
シンスプリントと疲労骨折との違いは「骨にひびが入っているかどうか」という点です。
2つのスポーツ障害はレントゲン撮影で識別でき、シンスプリントはレントゲンで明らかな異常が認められることはあまりありません。対して、レントゲン画像で骨にひびが入っていたり、骨膜反応が見られたりする場合は疲労骨折です。
ただし、初期段階の疲労骨折は骨の変化がレントゲンに映らないケースがあります。発生初期の識別をする場合は、MRI検査が必要です。
シンスプリントの発生要因としては、下半身の使いすぎ(オーバーユース)が挙げられます。オーバーユースとは、身体の特定部位に過剰な負荷が継続的にかかることです。
ランニングを例に挙げると、足を曲げる動作の繰り返しによってヒラメ筋・後脛骨筋が脛骨表面の骨膜を引っ張り、骨膜の微細損傷を引き起こします。骨膜の微細損傷は炎症となり、結果として痛みが生じる状態になることが、シンスプリントの主な発生メカニズムといわれています。
シンスプリントになりやすい人は、下記のような特徴がある人です。
扁平足とは、足底部に土踏まずのアーチがなく、平らになっている足のことです。扁平足の傾向がある人は足に伝わる衝撃が骨膜に伝わりやすく、シンスプリントのリスクが高くなります。
筋肉量が少ない人や筋肉の柔軟性が低下している人は、下腿の筋肉が骨膜を引っ張りやすく、シンスプリントの発生につながります。運動を始めたばかりの人や、筋肉量が少ない女性は注意が必要です。
シンスプリントは初心者病と言われることもあり、以前より運動量が増した人になりやすい傾向があります。健康のためにスポーツを始めた人や運動部の新入部員は、運動量に注意が必要です。
靴が合っていないと下半身に負担がかかりやすく、脛骨の骨膜にかかる負荷も大きくなってシンスプリントの発生につながります。
固い地面を走るときは、柔らかい地面を走るときよりも下半身にかかる負担が大きくなります。人工芝のグラウンドや、コンクリート・アスファルトの地面を走る機会が多い人は注意してください。
シンスプリントと医師に診断された場合、まずは保存療法で患部を安静に保ちます。
保存療法とは、症状の緩和・改善を目的とした治療のことです。シンスプリントの保存療法では、アイシングでの炎症の緩和や、テーピングによる運動制限を行います。
ステージ1とステージ2はスポーツ活動を続けながら、ステージ3はランニングとジャンプを制限し、ステージ4は4週間ほどランニングとジャンプを禁止します。
アイシング | 患部に氷のうを当てて冷やす |
テーピング | テープを巻いて関節・筋肉の動きを制限する |
他にも、炎症を抑える薬剤・湿布が処方されたり、超音波療法・電気刺激療法などの物理療法が行われたりする場合もあります。
治療の回復期には、患部の様子を見ながら少しずつ運動の量を戻していくことが重要です。壁に両手を突いて膝をゆっくりと曲げるストレッチや、下半身・足関節に負荷をかけすぎない筋トレを行って、筋肉量増加と柔軟性向上を図ります。
シンスプリントは治療しても再発する可能性があるため、スポーツ復帰や運動内容については医師に相談してください。
シンスプリントはなりやすい人の特徴や運動環境を把握していれば、発症や再発をある程度予防できます。足をよく使うスポーツをする人は、予防方法を把握することが大切です。
最後に、シンスプリントを予防する3つの方法を解説します。
アイシングは患部に氷のうを当てて冷やす行為であり、骨膜の炎症が原因となって引き起こされるシンスプリントの予防に適しています。すねの痛みなど、下腿に少しでも違和感があったときはアイシングがおすすめです。
アイシングで使う氷のうの作り方を紹介します。
(1) | 氷をザルにあけて水を流し、表面の霜を取る |
(2) | ポリ袋に氷を入れる |
(3) | ポリ袋の口に唇を当てて、中の空気を抜く |
(4) | ポリ袋の口を縛り、患部に当てる |
アイシングを行う時間は、1回あたり15~20分程度が目安です。冷やしすぎは凍傷につながるため、患部の痛みや熱がなくなり、皮膚の感覚もなくなったらアイシングを終了します。
運動前にストレッチを行うと、筋肉の柔軟性を高められてシンスプリントの予防ができます。
主なストレッチ方法を2つ紹介します。
(1) | 足を腰幅で開き、右足を足1つ分だけ前に出す |
(2) | 両足のかかとを床に付けた状態で、直立姿勢で立つ |
(3) | 両膝を曲げて、15~30秒キープする |
(4) | 左右を入れ替えて、もう一度行う |
カーフストレッチを行うときは、(2)の直立姿勢を崩さないことがコツです。正しく行うと、ふくらはぎの筋肉とアキレス腱の伸びを感じられます。
(1) | テニスボールのような硬く小さめのボールを用意する |
(2) | 床や台の上にボールを置き、ボールに右足を乗せる |
(3) | ボールに体重をかけて、40秒ほどゆっくりと前後に動かす |
(4) | 左足も同じように行う |
ボールを使った足裏ストレッチは、扁平足の改善が期待できます。実践するときはボールで滑るなどの怪我をしないように注意してください。
靴はダッシュ・ジャンプなどの衝撃から足を守る役割があり、自分に合わない靴はシンスプリントの原因となります。靴が合っていないときや、靴裏のソールが摩耗しているときは、靴や中敷きの見直しが必要です。
自分に合った靴は、下記のポイントで選びます。
特に足のサイズは、成人してからでも変化する場合があります。靴を購入する前には必ず足のサイズを測り、無理なく履ける靴を選ぶことが大切です。
すねに痛みを感じる状態をシンスプリントと言い、主に足のつま先を上げるときに使う筋肉の使い過ぎによって発症します。ランニング動作やジャンプを繰り返すスポーツをしている人は、すねに過剰な負荷がかかりやすく、炎症を起こしやすいため注意が必要です。
また、硬い地面で運動を重ねたり、合わない靴を履いたりすることでもシンスプリントになりやすくなります。すねに違和感があるときは無理をせず、アイシングや運動前のストレッチを取り入れてシンスプリントを予防することが大切です。
監修者プロフィール
福井 直樹 先生
理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員