Column 07

すねが痛むシンスプリントとは?原因や対処法を解説
- スポーツ
ランナーや陸上競技者を中心に、ランナー膝(腸脛靱帯炎)に悩まされる人は少なくありません。日ごろから長距離を走ることで、膝関節への負荷が累積し、痛みが起こりやすくなります。
また、初心者ランナーの場合も、適切なランニングフォームやトレーニングに関する知識不足が原因で、膝に過剰な負荷をかけてしまいやすい点に注意が必要です。
当記事では、ランナー膝とは何か、そのメカニズムや治療方法・予防方法などについて解説します。
ランナー膝は、膝の外側に痛みを感じるスポーツ障害の総称です。正式名称は腸脛靱帯炎で、膝の屈伸運動を繰り返すことによって、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆が摩擦し、炎症が起こります。
症状としては主に以下の通りです。
腸脛靱帯は、太ももの外側にある筋肉(大殿筋や大腿筋膜張筋など)から起始し、膝の外側にある骨(大腿骨外側上顆)に付着しています。
腸脛靱帯は、膝の外側を通り、大腿骨の外側から脛骨(すねの骨)の頂部にかけて伸びる靭帯で、膝を安定させる役割を持ちます。大腿骨外側上顆は、大腿骨の下端にある骨の出っ張りで、膝関節の外側を安定化させ、膝の曲げ伸ばしをスムーズにする機能を持つ部位です。
膝の曲げ伸ばしをするたびに、腸脛靱帯は大腿骨外側上顆の上を滑りながら移動します。
ランニングなどの運動で膝を繰り返し屈伸すると、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆が強く擦れて、摩擦が生じます。この摩擦によって、腸脛靱帯に炎症が起こり、ランナー膝(腸脛靱帯炎)が発症します。
ランナー膝が起こる原因は、主に以下の通りです。
長距離走やサイクリングなど、反復的な脚の使用は、腸脛靱帯に持続的なストレスを加え、摩擦と炎症を引き起こす可能性があります。また、ランニングや歩行の際に、足が体の中心線よりも外側に着地すると、膝に横方向の力が加わり、腸脛靱帯に対する摩擦が増加します。
アスファルトやコンクリートのような硬い表面での走行も、膝への衝撃を増加させ、腸脛靱帯に対するストレスを高める要因です。サポートやクッション性が不十分なシューズを使用すると、衝撃吸収が不十分となり、腸脛靱帯への負担が増えます。スポーツをする方はシューズ選びにもこだわることが大切です。
ランナー膝を疑う場合は、まずは早期に医療機関に相談することが大切です。
ランナー膝の治療にあたっては、ランニングを控えるところから始めます。その後、痛みの原因となる要因を詳細に調査し、根本的な解決を目指すことが一般的です。
治療の初期段階では、ランニングの中断や量の調整が推奨されます。この期間を利用して、痛みの原因に対処することが重要です。例えば、不適切なトレーニング方法の見直しや、足にフィットしないランニングシューズの変更、太ももの外側の筋肉をリラックスさせ腸脛靭帯を伸ばすストレッチ、などが挙げられます。
消炎鎮痛剤や湿布の使用も痛みと炎症を軽減させる手段として有効です。さらに、超音波療法や電気刺激療法、アイシングなどの物理療法を用いて炎症の緩和を目指します。
また、機能の改善を図るためには、膝関節周辺の筋力強化が不可欠ですし、ランニング動作の改善も腸脛靭帯炎の治療において重要です。つま先が外を向く・体幹が横に傾くなどのフォームの乱れがあれば原因を特定し、適切なストレッチや筋力トレーニング、徒手療法を実施します。
ランナー膝の予防として、まずはランニング前後にウォーミングアップとクールダウンをしっかり行うことで、筋肉を温め柔軟性を高めます。また、大腿四頭筋やハムストリングスなどの筋力を強化すれば、膝関節をより安定させることが可能です。
ストレッチは毎日行うのが理想です。以下のストレッチを習慣的に取り入れてみてください。
ランニングは心身の健康に多くの利点をもたらす有酸素運動です。しかし、繰り返される衝撃や不適切なトレーニング方法、シューズの問題などが原因で、ランナーは特有の疾患に見舞われることがあります。
ランニングをする人に起こりやすいその他の3つの疾患について、特徴と予防策を簡潔に紹介します。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、膝の前部、特に膝蓋骨(膝の皿)の下、または周辺の腱に炎症が生じる障害です。膝蓋腱は、大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉群)と膝蓋骨を結び、さらに膝蓋骨から下腿の骨につながっています。膝蓋腱は、ジャンプ、走る、急な方向転換などの動作をする際に機能します。
ジャンパー膝の主な症状は以下の通りです。
ジャンパー膝の予防と治療には、適切なウォームアップとクールダウン、ストレッチと筋力トレーニングが大切です。特に、大腿四頭筋とハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)を強化することが重要です。
鵞足炎(がそくえん)は、膝の内側に位置する鵞足と呼ばれる部位に炎症が生じる状態です。
鵞足とは、膝関節の内側、特に下腿の骨に付着する3つの筋肉(縫工筋、薄筋、ヒラメ筋)の腱が集まって形成される構造のことです。これらの筋肉と腱が膝の安定性や動きを支えており、ここで炎症が生じると膝の内側に痛みを感じるようになります。
鵞足炎は、過度の運動や不適切な体の使い方、筋肉の過緊張による腱の炎症が主な原因です。ランニングやウォーキングなど、脚に繰り返し負担がかかるスポーツを行う人に多く見られます。また、筋肉の柔軟性不足や不均衡、扁平足などの足の問題も、鵞足炎のリスクを高める要因となり得ます。
半月板損傷は、膝関節にある軟骨「半月板」の損傷により、ひざの痛みや腫れ、可動域の制限などの症状が起きる疾患です。
半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある2つのC字型の軟骨で、衝撃吸収・荷重分散・関節の安定化・滑らかな運動の促進、などの機能を持ちます。半月板が過度な力や急な方向転換、深いしゃがみ込みなどによって損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや引っ掛かりを感じるようになります。
予防方法として、スポーツ前にしっかりとウォーミングアップを行うことや、膝の筋力や柔軟性を鍛えること、膝に負担がかからない体重を維持することなどが大切です。
ランナー膝を予防するためには、まずはランニング前後に十分なウォーミングアップとストレッチを実施し、ランニングフォームの改善を意識してみてください。
また、痛みが発症したら、整形外科などの医療機関に相談し、まずは炎症が落ち着くまで休息を取ることが大切です。炎症が収まらないうちに再びランニングをすると、さらに靱帯が損傷を受け、悪循環に陥る恐れがあります。
伊藤超短波株式会社では、肩・腰・膝の痛みでお悩みの方に向けた製品を用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。治療現場での豊富な経験・知見があり、豊富な物理療法の知識がある社員が、お客様に合った製品を紹介いたします。
監修者プロフィール
福井 直樹 先生
理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員