Column 02
腰痛の原因となる病気とは?腰痛になったときの対処方法も解説
- 部位のお悩み
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで、痛みや関節の腫れが起きる病気です。悪化すると膝関節が変形することもあり、一度発症すると自力での治療は難しくなります。筋肉の衰えや肥満などで、膝関節への負担が大きくなると発症しやすくなるため、適度な運動やストレッチにより筋力アップや柔軟性アップに努めるのが重要です。
この記事では、変形性膝関節症の症状や起きる原因、ストレッチ・トレーニング方法や予防方法について解説します。
変形性膝関節症とは、膝の関節の軟骨が少しずつすり減り、痛みが生じる病気です。主に中高年に見られ、男性よりも女性に起こりやすいと言われています。名前の通り、関節内の炎症や関節組織が変性することで、関節の変形を引き起こす場合もある疾患です。
変形性膝関節症で見られる症状と、症状が起きる原因について解説します。
変形性膝関節症が進行すると、初期・中期・末期で特徴的な症状が現れます。それぞれで見られる具体的な症状は、以下の通りです。
| 初期 |
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| 中期 |
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| 末期 |
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初期の変形性膝関節症では軟骨がすり減り関節の隙間が狭くなっているため、立ち上がったり、座ったりする際に痛みや違和感が現れます。中期で代表的な症状は、階段の上り下り・正座時の膝の痛みです。軟骨のすり減りが進行し、初期よりも痛みを感じるケースが増えます。炎症によって、膝が腫れる場合も少なくありません。
さらに進行すると軟骨のクッションがなく骨同士が直接ぶつかるため、激しい痛みが慢性的に続いたり、膝の曲げ伸ばしの動作が制限されたりします。膝関節の変形が進むと、膝関節の靭帯のバランスが崩れて膝が不安定になり、日常生活に大きな支障が出る可能性もあります。
変形性膝関節症が起きる原因には個人差がありますが、加齢により膝関節の軟骨の質が低下することで起こるケースが多い疾患です。また、骨折や半月板損傷、化膿性関節炎などの後遺症として発症する場合があります。
筋肉の衰えや肥満なども、膝関節への負担を増大させるため、変形性膝関節症の発症危険性を高めてしまいます。O脚やX脚といった脚の変形も、変形性膝関節症が起きる原因の1つです。特に、日本人にはO脚の人が多いと言われています。
さらに、遺伝や女性ホルモンも原因の1つと考えられています。親に変形性膝関節症が見られた場合には、早い段階から予防に努めるのが大切です。女性の場合は軟骨形成に女性ホルモンの働きが必要とされており、ホルモン分泌量が変化する閉経後に、変形性膝関節症になりやすいと言われています。
変形性膝関節症は、自力で治すのが難しい疾患です。軟骨の再生能力には限界があり、一度すり減ってしまうと、ほとんどのケースで自然治癒は難しいと言われています。変形性膝関節症の改善を望む場合は、自分の力だけで治そうとせず、医師や専門家に相談しましょう。
変形性膝関節症の通常の治療方法としては、運動療法・薬物療法・手術療法が挙げられます。手術療法は、保存療法としての運動療法と薬物療法に取り組んでも効果が得られない、症状が悪化しているといった場合に選択される治療法です。
変形性膝関節症の進行を遅らせるためには、運動療法が効果的と言われています。運動療法の具体例として、膝周辺の筋肉を伸ばすストレッチと足上げトレーニングの2種類を解説します。
膝周辺の筋肉を伸ばすストレッチ方法は、以下の通りです。
| (1) | 仰向けの状態で、片側の太ももの裏を両手で抱えます。 |
| (2) | 抱えた脚を胸の方向へ引き寄せ、5秒間数えます。痛みがない程度に引き寄せましょう。 |
| (3) | (1)と(2)の動作を5回から10回、無理のない範囲で繰り返します。反対側も同様に行ってください。 |
ストレッチは、体温が上昇しているタイミングで行うと、より効果的とされています。入浴後にストレッチを取り入れ、習慣化するのがおすすめです。
足上げトレーニングの方法は、以下の通りです。
| (1) | 椅子に腰かけた状態で、片側の膝を曲げて足の裏を地面に付けておきます。 |
| (2) | もう片方の脚は、足首を直角に曲げた状態で膝を伸ばしてください。 |
| (3) | 膝を伸ばしたほうの足をゆっくり上げて、床から10cm程の高さで5秒から10秒間キープした後、ゆっくり床へ下ろします。 |
| (4) | (2)と(3)の動作を20回繰り返し、もう片方の脚も同様に行います。 |
トレーニング前には、変形性膝関節症の悪化や新たなケガを予防するために、ストレッチで筋肉を伸ばして関節の可動域を広げておくのが重要です。変形性膝関節症のストレッチやトレーニングは、呼吸を止めずに、リラックスした状態でゆっくりと行います。
変形性膝関節症になった場合に、避けるべき動作は、以下の4つです。
正座や和式トイレの使用といった、膝を深く曲げる動作は、膝関節に大きな負担がかかります。なるべく椅子やソファに腰掛けたり、洋式トイレを使ったりして、膝関節に負担がかからないように工夫してください。
無理な運動は、膝軟骨がすり減る原因となり、症状の悪化につながる可能性があります。急な方向転換やストップ、ジャンプなどを伴う激しい動きは避けてください。膝関節周辺に負荷をかける筋トレメニューもおすすめできません。ウォーキングや水泳、ストレッチといった、膝への負荷が少ない運動を選ぶのが大切です。
重い物を上げ下げする動作も、膝に大きな負担がかかります。仕事で重い物を運ぶ際や、布団を持ち運ぶ場合は、なるべく周りの人に手伝ってもらうなどの対策が必要です。
飲酒は軟骨の弾力性に影響を与え、喫煙は軟骨を作るために欠かせないビタミンCを減少させると言われています。変形性膝関節症になった場合は、できるだけ飲酒や喫煙を避ける必要があります。
変形性膝関節症を予防するためのポイントは、以下の通りです。
運動不足の状態では、関節周りの筋肉が衰えて、膝痛が起こりやすくなってしまいます。変形性膝関節症を予防するために、年齢や体調に合わせて、無理のない範囲で運動を続けるのが大切です。例えば、ウォーキングや水中ウォーキングなどは、筋力アップにおすすめの運動です。激しい運動・長時間の運動は、膝への負担増になるため、自分に合った運動量を意識してください。
運動習慣を身につけるだけではなく、バランスの取れた食事を摂って、体調管理に努める必要があります。食事に気を配ることで、肥満やホルモンバランスの乱れ、筋力低下といった変形性膝関節症の原因にアプローチできる場合もあります。
また、膝への負担軽減のため、体重管理を心がけるのも重要です。肥満は、変形性膝関節症につながりやすい傾向が見られます。健康的な食事や適度な運動を習慣化して、適切な体重を維持してください。
さらに、関節部分を冷やす行為も、変形性膝関節症の予防にとって好ましくありません。膝関節を冷やすと、血管が収縮することで血行不良となり、周囲の筋肉や腱の柔軟性が損なわれ、筋肉疲労につながってしまいます。服装や毎日の入浴などによって、膝を温めるように心がけてください。サポーターなどを利用して、関節周りの冷えを防ぐのもおすすめです。
ただし、膝に炎症が見られる場合は温めるのではなく、冷やす必要があるため注意が必要です。
変形性膝関節症は加齢や肥満、筋力の衰えに伴う膝への負担増加がきっかけで発症しやすいため、日常生活での予防が重要です。特に女性は変形性膝関節症になりやすいため、適度な運動や体重管理、バランスの取れた食事、冷えの予防などの方法で生活習慣の改善に努めてください。
発症後、症状が進行すると手術が必要になるケースもあることから、早めに医師に相談することが大切です。膝の可動域を保つために、ストレッチや軽いトレーニングを行うことで、進行を遅らせる効果が期待できます。ただし、痛みを我慢するほどの無理な運動は、症状を悪化させる可能性があるため、無理のない範囲で行いましょう。
監修者プロフィール
福井 直樹 先生
理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員