捻挫してしまったときの治し方は?応急処置や予防方法を解説

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捻挫は、関節を不自然にひねることで靭帯や周辺組織が損傷するケガです。足首や手首などの関節部で発生する場合が多く、特に足首の捻挫はスポーツ外傷の中でもよく見られる代表的な例です。足の捻挫は足関節外側靭帯損傷とも呼ばれ、放置すると足関節の機能障害が残る可能性があるため、適切な治療が必要です。

当記事では、捻挫の症状や原因、治療法を詳しく解説します。症状が長引かないよう、痛みを感じたときは無理せず医療機関を受診しましょう。

1. 捻挫とは?

捻挫とは、関節を不自然な向きにひねることで、靭帯をはじめとする周辺組織が傷ついてしまう状態を指します。捻挫は、足首や手首、肩、膝といった関節がある部分で発生するケガです。特に、足首の捻挫はスポーツ外傷の中でも代表的なケガとして知られています。球技でよく見られる突き指も、捻挫の1つとして挙げられます。

足の捻挫の多くは、足部を内側にひねることで受傷する、足関節外側靭帯損傷と呼ばれるものです。足関節外側靭帯損傷は放置すると足関節の機能障害が残るケースもあるため、適切な診断・治療を受ける必要があります。

1-1. 捻挫の症状

捻挫の症状としては、関節の痛みや腫れが挙げられます。症状は、捻挫の程度と一致する場合がほとんどです。しかし、一部の靭帯は痛みを感じにくいことがあるため、注意が必要です。

足関節を捻挫した場合は、ケガの直後から外くるぶしの周辺に痛みや腫れが見られます。また、時間が経つと紫色の皮下出血が見られる場合もあります。足関節外側靭帯損傷では、歩行困難になるほどの痛みが出る事例も珍しくありません。

捻挫の重症度は、靭帯の損傷度合いによって、以下の3段階に分類されます。

1度 痛みや腫れは軽度で、靭帯が一時的に伸びている状態
2度 靭帯の一部が切れている状態
3度 靭帯が完全に切れている靭帯断裂と呼ばれる状況で、関節が不安定な状態

1-2. 捻挫の原因

捻挫は、筋肉や関節に負荷がかかることで起こります。急に走る・飛び跳ねるなど、日頃使わない筋肉や関節に急激に負荷がかかるような動作には、特に注意が必要です。

また、捻挫はスポーツだけがきっかけで起こる訳ではありません。転倒や重いものを持ち上げた際など、日常生活の何気ない動きでも、捻挫が起こるケースが見られます。自宅でも、階段や玄関の段差で足を踏み外して受傷するケースが少なくありません。

さらに、身体の大きさに対して頭部の割合が大きい子どもは大人よりも転びやすいため、捻挫などのケガが多い傾向が見られます。

2. 捻挫の治し方

実際に捻挫してしまったときの治し方として、次の4つの方法を紹介します。どのような対応が必要なのかを分かりやすく解説しますので、捻挫からの回復を目指す際に役立ててください。

2-1. 捻挫の応急処置

捻挫してしまったときは、応急処置をきちんと行うかどうかが、予後を左右する重要なポイントです。具体的な応急治療の方法として、RICE(ライス)処置を紹介します。

Rest

「安静」という意味です。捻挫した部位を動かすと、腫れや血管・神経の損傷が悪化する恐れがあります。捻挫による腫れや痛みを最小限に抑えるために、患部に負担がかからない体勢で安静にするのが大切です。タオルや添え木、テーピングなどを使って、患部が動かないように工夫します。

Icing

「冷却」という意味を持ち、患部を冷やして、受傷部位の炎症を抑えるために行う処置です。二次性の低酸素障害による細胞壊死を抑える効果も期待できます。ケガをしてすぐに、まだ腫れが見られないタイミングで行うのが効果的です。ただし、冷やしすぎは凍傷の危険性があるため、注意しましょう。氷を入れたビニール袋やアイスバッグを使い、15分から20分ほどアイシングを続けたら外し、また痛みを感じたら冷やすという作業を繰り返します。

Compression

「圧迫」という意味です。捻挫した部分の腫れ・内出血などを最小限に抑えるために、弾性包帯やテーピングを使って圧迫します。皮膚が鬱血しないほどの強さで、末梢から心臓に向かって損傷部位に圧迫を加えます。ただし、強すぎる圧迫は循環障害・神経障害を引き起こす恐れがあるので注意しましょう。

Elevation

「挙上」という意味があります。捻挫した部分の腫れの増大を防いだり、痛みの軽減を図ったりするのが目的です。椅子やクッションなどを使って、捻挫で損傷した部分を心臓よりも高い位置に挙げて安静にします。

自己判断でケガを軽視すると、捻挫が癖になり、回復が遅れる場合もあります。応急処置後は、病院・クリニック・接骨院などを受診して医師や専門家に判断を求めるのが大切です。

2-2. テーピングによる固定

テーピングには、患部を固定して特定の関節の動きを任意に制限したり、圧迫したりする役割があります。また、関節部分の動きを制限して圧迫することで、一時的に痛みを軽減できるケースも少なくありません。損傷部分に負荷がかかる特定の動きだけを制限することを考えながら、テーピングを貼る場所や方向、強さを決めるのが重要です。

テーピングの巻き方を間違えると、循環障害や筋腱障害、神経障害などを引き起こす場合があります。医療機関や専門家の判断のもとで、テーピングによる固定を行ってもらうと安心です。巻き終わった後には、皮膚の感覚が正常か、強度は適当かを確かめるようにしてください。

2-3. ギプスによる固定

捻挫の重症度が高い場合は、医療機関や専門家の判断のもと、捻挫した部分をギプスで固定してもらうのも1つの方法です。捻挫で負傷した靭帯を固定せずに放置していると関節が安定しないため、治りが遅くなったり、別の大きなケガにつながったりする可能性があります。

ギプスで患部全体を覆って、靭帯や関節周りをしっかり固定することで、損傷部分の負荷軽減や早期回復が期待できます。ギプスによる固定は、捻挫がもととなる靭帯損傷・骨折など、テーピングや添え木による固定が難しい場合に採用されます。

2-4. 運動療法

患部の固定中に行う運動療法や再発防止を目的とした運動療法も、捻挫の治し方の1つです。患部の固定中にリハビリテーションを行うことで、腫れの軽減や早期のスポーツ復帰を目指せる可能性があります。

また、患部の固定期間後や炎症後は周辺組織の癒着が起こり、患部周辺の可動域制限が起こりやすい傾向が見られます。筋肉や靭帯、脂肪帯といった組織の動きを改善するために、電気刺激療法や超音波刺激療法などの物理療法も効果的です。

ただし、患部を再び悪化させないために、固定を外した後も一定期間は捻挫したときと同じ動きを控えるのが大切です。固定終了後、ケガの具合を考慮しながら患部周辺の筋力トレーニングを行い、再発防止を目指します。

3. 捻挫の予防方法

捻挫の予防法としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 運動前はウォーミングアップを行う
  2. ストレッチを行う
  3. 予防のテーピングを行う

運動前には必ずウォーミングアップを行い、体を温めて、関節の可動域を広げておくのが重要です。普段動かさない関節へ急に大きな負荷が加わると、捻挫が起こる可能性があります。まずは軽めの運動から始めて、体の柔軟性を高めてください。

ウォーミングアップの1つとして、ストレッチを取り入れるのもおすすめです。ラジオ体操のようにダイナミックな動きをすることで、関節や筋肉を伸ばす動きが効果的と言われています。具体的には、手首・足首・腰まわりなどの捻挫が起こりやすい部分を意識して、入念に伸ばしておきます。ただし、ストレッチの際に大きな反動をつけると、関節や筋肉を痛める可能性があるため注意が必要です。

また、手首や足首などの負担がかかりやすい部分にテーピングを巻いて関節の安定性を高めると、捻挫予防につながります。

まとめ

捻挫はスポーツや日常生活で誰にでも起こりうるケガですが、適切な対応を行うことで早期回復を目指せます。まずはRICE処置を行い、症状に応じた固定やリハビリ、状態に合わせた電気刺激療法や超音波刺激療法などの物理療法を行いましょう。患部に痛みを感じたときは無理をせず、専門家の指導のもとで適切な治療を受けることが大切です。

また、捻挫の再発防止や予防には、日頃のウォーミングアップやストレッチ、必要に応じたテーピングが効果的です。普段行わない動作を行う際は、しっかり準備をしましょう。

監修者プロフィール

福井 直樹 先生

理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員