腸内環境を整えるにはどうすればよい?食事や生活習慣を解説

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腸には、免疫細胞の約6~7割が集まっています。腸内環境が良好だと免疫力が向上し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりにくくなると言われています。
(出典:鹿屋市「病気に負けない免疫力づくり」)

また、腸内細菌は食物繊維を分解してビタミンを生成したり、カルシウムの吸収を助けたりするなど、腸での消化や吸収をサポートする存在です。

当記事では、腸内環境を整えるメリットや、腸内環境を整えるための食事や生活習慣について詳しく解説します。腸内環境を整えるための具体的な方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

1. 腸内環境とは?

腸内環境とは、人の腸の中に生息している数多くの細菌によって作られる生態系のことです。腸内には、1,000種類以上、100兆個もの細菌が住んでいると言われています。それぞれ異なる役割を持ち、腸内で複雑な生態系を築いています。

腸内細菌は大きく分けて3つの種類に分けられます。

善玉菌

ビフィズス菌や乳酸菌などが代表的で、腸内環境を整え、免疫力を高める働きがあります。また、有害な病原菌の増殖を抑制する働きをします。

悪玉菌

腐敗物質を作り出し、下痢や便秘の原因となるのが悪玉菌です。悪玉菌は腸内でタンパク質などを分解する際に、アンモニアやインドールなどの有害物質を作り出します。これらの物質は腸内を腐敗させ、善玉菌の働きを阻害します。

日和見菌

善玉菌と悪玉菌のどちらかに味方する菌で、腸内の環境によって善玉菌になったり、悪玉菌になったりします。

(出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「腸内細菌と健康」)

2. 腸内環境を整えるメリット

健康な腸の中は、善玉菌と悪玉菌、日和見菌がバランスよく共存しています。しかし、食生活の乱れやストレスなどによって腸内のバランスが崩れると、さまざまな健康問題を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。

以下では、腸内環境を整えるメリットを4つ解説します。

2-1. 便通がよくなる

腸内環境を整えることで、便通がよくなると言われています。

善玉菌は、腸のぜんどう運動を活発にし、便をスムーズに送り出す働きがあります。また、善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸は腸の粘膜に水分を与え、便を柔らかくすることで排便をスムーズにします。

2-2. 免疫力が上がる

腸には、食べ物や空気だけでなく、体に害を与える病原菌などさまざまな物質が侵入します。そのため、腸は単なる消化器官ではなく、人の体の免疫システムの中心的な役割も担う器官です。腸内には、免疫細胞の約6~7割が集まっており、日々、体内に侵入しようとする細菌やウイルスと戦っています。

善玉菌は腸管のバリア機能を強化し、病原菌の侵入を防ぎます。また、免疫細胞を活性化させ、体の防御力を高めるのも特徴です。

2-3. 太りにくくなる

善玉菌は腸内環境を整え、短鎖脂肪酸という物質を生成します。短鎖脂肪酸とは腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖などを発酵する際に生成される、炭素数が6個以下の脂肪酸の総称で、酢酸やプロピオン酸、酪酸などが代表的なものとして挙げられます。

短鎖脂肪酸は大腸に住むビフィズス菌などの善玉菌が、食物繊維やオリゴ糖をエサにして発酵する過程で生成されます。短鎖脂肪酸には、脂肪の燃焼を促したり、食欲を抑えたりする働きがあり、太りにくい体を作るのに役立ちます。

(出典:東京農工大学大学院「食事由来腸内細菌代謝産物、短鎖脂肪酸と宿主代謝制御」)

3. 腸内環境はどのように整えればよい?

「腸内環境を整える」とは、腸の中に生息する善玉菌を増やす一方で悪玉菌を減らし、腸内フローラと呼ばれる細菌のバランスを良好な状態にすることです。
(出典:厚生労働省「腸内細菌と健康」)

以下では、腸内環境を整えるための具体的な方法を4つ紹介します。

3-1. 乳酸菌を摂取する

乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出す細菌の総称です。ヨーグルトやチーズなどの発酵食品に多く含まれており、腸内に住み着いて善玉菌として働いています。
(出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「腸内細菌と健康」)

乳酸菌が腸内環境に与える主な影響は、以下の通りです。

善玉菌を増やす

乳酸菌を摂取することで、腸内の善玉菌が増え、悪玉菌の増殖を抑えます。

腸内環境改善

乳酸菌は、腸内のpHを酸性にする働きがあり、有害な細菌の繁殖を防ぎます。

免疫力向上

乳酸菌は、免疫細胞を活性化させ、体の防御力を高めます。

腸の働き改善

腸のぜんどう運動を活発にし、便秘改善に役立ちます。

ヨーグルトは、乳酸菌を摂取できる代表的な食品です。また、乳酸発酵によって作られるキムチにも乳酸菌が含まれています。

3-2. 食物繊維を摂取する

食物繊維は、人が普段食べている食品に含まれている、消化酵素では消化されない成分の総称です。主に植物に含まれており、腸内環境を整えたり、血糖値の上昇を緩やかにしたりするなどさまざまな健康効果をもたらすため、「第6の栄養素」と呼ばれることもあります。

食物繊維は、大きく分けて水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。

水溶性食物繊維

水に溶ける性質を持ち、粘性が高いのが特徴です。

  • 主な働き
    血糖値の上昇抑制、コレステロール値の低下、便を柔らかくする
  • 含まれる食品
    海藻、果物、豆類など
不溶性食物繊維

水に溶けない性質を持ち、腸の働きを活発にする働きがあります。

  • 主な働き
    便通の改善、腸内環境の改善
  • 含まれる食品
    玄米、全粒粉、野菜の皮、豆類など

食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増殖させます。善玉菌が増えることで、腸内環境が改善され、有害な菌の増殖を抑えられます。また、食物繊維の発酵によって腸内が弱酸性になり、善玉菌が住みやすい環境になります。食物繊維は食後の血糖値の上昇を緩やかにし糖尿病のリスクを下げるほか、血中コレステロール値を下げ動脈硬化のリスクを減らす効果も期待できます。

(出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「食物繊維」)

3-3. 規則正しい生活を送る

人の体は、自律神経によってさまざまな機能がコントロールされています。自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経の2種類があります。

交感神経

緊張状態や活動状態のときに優位になり、心拍数や血圧を上昇させ、消化活動を抑制します。

副交感神経

リラックス状態のときに優位になり、心拍数や血圧を低下させ、消化活動を活発にします。

腸の働きは自律神経系にも左右されます。規則正しい生活を送ることで、副交感神経が優位になる状態を作れ、腸の働きが活発化し、結果的に腸内環境が整います。

(出典:日本自律神経学会総会「自律神経と消化器症状」)

規則正しい生活を送るためにも、以下のポイントを心がけてみてください。

睡眠時間をしっかりとる

  • 睡眠不足は、自律神経のバランスを乱し、腸の働きを低下させます。
  • 質の高い睡眠をとるために、寝る前のスマホの使用は控え、リラックスできる環境を作ることをおすすめします。

食事時間を規則正しくする

  • 食事時間を決めて、規則正しく食事をとると、生活リズムが整います。
  • 間食は控え、3食バランスのよい食事を心がけることが大切です。

ストレスを溜めない

  • ストレスは、交感神経を優位にし、腸の働きを抑制します。
  • ヨガや瞑想など、リラックスできる時間を作り、ストレスを解消できるようにすることが大切です。

3-4. 適度に運動を行う

運動によって全身の血行がよくなることで、腸の働きが活発になり、栄養素の吸収がスムーズに行われるようになります。さらに、運動をすると腸の筋肉が刺激され、ぜんどう運動も活発になります。

また運動は、ストレスを軽減する効果もあります。ストレスは腸の働きを抑制するため、ストレスを解消することで、腸内環境が安定しやすくなります。

まとめ

健康な体づくりには、腸内環境を整えることが必要です。腸内環境が乱れると、便秘や肌トラブル、免疫力の低下など、さまざまな不調を引き起こす恐れがあります。

腸内環境を整えるためには、食事や生活習慣を見直しましょう。たとえば食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなるので、ごぼう、ほうれん草、豆類、全粒粉などの食品を積極的に摂ることをおすすめします。また、ヨーグルト、キムチ、納豆など、発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が豊富に含まれており、腸内環境の改善に役立ちます。

監修者プロフィール

福井 直樹 先生

理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員