Column 07
すねが痛むシンスプリントとは?原因や対処法を解説
オスグッド病は、成長期に活発なスポーツ活動を行う男子に多く見られるスポーツ障害です。膝の下、脛骨の突出部周辺に痛みが現れることが特徴で、ジャンプや走るといった動作後に痛みが強くなることが一般的です。
オスグッド病は成長期が終われば自然と症状が改善することが多いですが、症状がひどくならないためには早期発見・早期治療が重要です。膝に痛みを感じたら、早めに医療機関に相談するようにしてください。
当記事では、オスグッド病のメカニズムや治療方法などについて詳しく解説します。
オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)は、成長期の子どもや青少年に多く見られる膝の疾患です。特に成長期の男子に起こりやすいとされ、スポーツをする子どもたちに多いスポーツ障害の1つとして知られています。オスグッド病は、膝蓋骨下の骨(脛骨粗面)が突出し、痛みや炎症を起こすのが特徴です。
オスグッド病の症状は、主に以下のようなタイミングで痛みが生じます。
オスグッド病になると、ジャンプや走るなど、膝に負担がかかる運動をした際に痛みを感じます。特に、サッカーやバスケットボール、陸上競技など、膝への衝撃が大きいスポーツをする際にその痛みが顕著になります。
また、膝を曲げた状態で長時間座っていると痛みが生じることがあり、学校の授業中などでも痛みを感じる人もいます。
成長期には、骨が急速に成長する一方で、筋肉や腱などの軟部組織は追いつかず硬くなってしまいます。特にスポーツ活動で膝に繰り返し負荷がかかることで、膝蓋腱付着部に炎症が起こり、痛みや腫れが生じやすいです。
ランニングやジャンプ動作の際、大きな力が膝蓋腱を介して膝蓋骨に加わるため、このストレスに耐えられずに炎症が生じやすくなります。
オスグッド病の病気の診断は、問診と触診に加え、レントゲンやMRIなどの画像診断を通じて行われます。問診では、活動履歴や痛みの具体的な状況が確認され、触診では膝蓋骨腱が脛骨に付着している部分の炎症を確認します。レントゲン検査では、脛骨粗面の骨端核の変化や骨片のはがれを検出し、MRIでは膝蓋靭帯の肥厚や炎症性の変化が観察されます。
オスグッド病は成長痛とは異なり、スポーツによる障害であり、診断にはレントゲンが有効です。成長痛は足全体に痛みがありますが、オスグッド病では膝の下に痛みが集中し、レントゲンで変化が確認できます。
早期に発見し、適切に治療すると症状の悪化を防ぐことが可能です。子どもたちが健康的に成長するためには、膝に痛みを感じたら速やかに専門の医療機関での診察を受けることが大切です。
オスグッド病になりやすい人は、主に成長期にある子どもたちです。特にジャンプ動作が多いバレーボールやバスケットボール、ダッシュ・キックなどを行うサッカーなどのスポーツを行う子どもや、身体活動が活発な成長期の男子に多く見られます。
成長期の子どもの骨は、成長板と呼ばれる領域で成長を続けています。成長板は、骨の長さを増す役割を担っており、この時期には骨よりも軟らかく、けがやストレスに対して脆弱です。
急激な成長の間に、筋肉や腱の成長が骨の成長速度に追いつかない場合があります。このアンバランスによって、腱が付着する部位に過剰な引っ張りを生じさせ、結果としてオスグッド病の症状を引き起こすことがあります。
オスグッド病と成長痛は、成長期の子どもたちに見られる痛みの症状ですが、原因と特徴には明確な違いがあります。オスグッド病は膝の下、脛骨の突出部において筋肉が骨を引っ張ることで生じる炎症と痛みを特徴とし、主にスポーツ活動をする子どもに見られます。
一方で成長痛は、主に夜間に下肢に痛みを感じる一般的な症状で、特定の部位だけではなく、膝周囲を含む足全体に痛みが出ることが特徴です。成長痛の原因は完全には明らかになっていませんが、日中の活動による筋肉の疲労や精神的なストレスが関係しているとされています。成長痛は一般的に成長期が終わると自然に改善され、特別な治療を必要とすることは稀です。
オスグッド病は、成長期が終わると骨の成長も止まるため、基本的には再発することはないとの考え方が一般的です。しかし、一部の子どもにおいて、特定の状況下でオスグッド病の後遺症や、同様の症状が再発する可能性があります。これは、過度な運動や特定の運動の繰り返しによるオーバーユースが原因で、膝に過度な負荷がかかり続けることが一因とされています。
再発を防ぐためには、単に膝を鍛えるのではなく、運動時の正しい姿勢を習得し、膝への負担を適切に分散させることが重要です。姿勢が悪いと、膝や下半身への負荷が増え、オスグッド病をはじめとする膝の問題を引き起こしやすくなります。適切なリハビリテーションや、スポーツを再開する前の体の準備、運動量の調整が、再発防止には欠かせません。
オスグッド病は、多くの場合、成長が完了すると自然に治ります。しかし、症状が特に重い場合には、成長期が終了しても慢性的な痛みが続くことがあります。そのため、早期から適切な治療を行い、可能な限り予防策を講じることが重要です。
オスグッド病の治療法と予防法について解説します。
オスグッド病の治療においては、まずはアイシングで痛みを軽減させることが重要です。氷をビニール袋に入れたものや冷凍パックを薄い布で包み、患部に10~20分程度当て、1日に数回、痛みが軽減するまで続けます。ただし、直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため注意が必要です。
痛みが強い時は、スポーツや激しい運動を避け、膝に負担がかからないようにしてください。安静期間は、痛みが完全に収まるまで、場合によっては数週間から数か月必要となることもあります。
また、治療用のベルトや膝パッドの使用も有効です。これらは脛骨結節に直接的な圧力をかけずに膝周りをサポートし、日常生活や軽い運動をする際の痛みを軽減させます。適切なサポート具を選ぶことで、活動制限中も膝の負担を減らしながら、筋力の低下を防げます。 オスグッド病の治療では、痛みの管理と適切な休息が基本であり、場合によっては医療専門家によるリハビリテーションが推奨されます。リハビリは、膝だけでなく股関節や足首など、全身のバランスを整えることを目的としており、再発防止にもつながります。
オスグッド病の予防において、大腿四頭筋の柔軟性を高めることが非常に重要です。大腿四頭筋が柔軟であると、膝への負担を減らし、オスグッド病のリスクを低減するのに役立ちます。
そのため、成長期の子どもたちには、特に運動前・運動後にしっかりとストレッチをさせることが大切です。
たとえば大腿四頭筋を伸ばすために、立った状態で片足を後ろに曲げ、同じ側の手で足首を持ち引き上げるストレッチを行います。このポーズを各足で約30秒間キープし、ゆっくりと呼吸を続けながら、伸びている感覚を意識してみてください。
オスグッド病を予防するためには、まずはスポーツをする際には、ウォーミングアップとクールダウンをしっかりと行ってください。膝に負担がかかる運動を行う場合は、柔軟性を高めるストレッチや、膝周りの筋肉を鍛えるトレーニングも併せて取り組むことが大切です。
オスグッド病は、成長期に自然治癒するケースが多いですが、適切な治療を受けることで症状を早く改善し、スポーツ活動を継続しやすくなります。初期治療としては、一時的な運動制限と休養、そして物理療法(アイシング、マッサージなど)が行われます。痛みが長く続く場合は、装具などのサポートが必要になることが一般的です。
監修者プロフィール
福井 直樹 先生
理学療法士
学校法人響和会 和歌山リハビリテーション専門職大学 教員
(一社)日本物理療法学会 理事
(一社)日本理学療法学会連合日本物理療法研究会 評議員